大人になれたと気づけた日

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* 「はい、では続いて、今日から参加してくれる講師の宮園真依香さんです」  騙された!  溝口さんは「補助」だって言ってたのに、当然のように「講師」と紹介されてしまった。 「あー、み、宮園です。雷踊りに参加するのは本当に久しぶりですが……はい、その……よろしくお願いします」  なんの中身もない挨拶だったが、健気な小学生女子たちは「お願いしまーす」と声を揃えて返してくれた。  地区センターの四階には昔と変わらない体育館みたいなスペースがあって、今日は二十人ぐらいの女の子がいた。みんな近所の三郷小学校の子たちらしい。  何百年も伝わっている中で多少変わったこともあるのかもしれないが、この十年ぐらいで特別変わったこともなかった。  雷踊りは特別難しい何かがあるわけではなく、音楽に合わせて踊るという意味では、ほかの民謡や音頭と比べて大きな差があったりはしない。どこら辺が雨乞いに繋がっているのか、小学生時代の私にはわかる由もなかった。  両手を空にむかって伸ばすあのときかなぁなんて思ったりもするが、今でも正直よくわからない。  私は初めて踊るという一年生や去年経験したばかりの二年生の合計四人を担当した。低学年グループはいくつかあって、他のグループの講師には、あーみんや同じ中学で見たことのある人なんかもいた。  私は純粋なまっすぐな視線を受けながら雷踊りを説明した。最初は音楽のテンポを50%にして、鏡の前に私が立つ。その後ろに一、二年生の子たちが並ぶ。  私の動きを必死に追ってくる視線を感じながら鏡を見ながら私はそれぞれの振り付けを説明していく。なるべく単純に、なるべくわかりやすく。 「はい、ここで手を回す。開いて、閉じて、左、右見て……」  遠い昔に私もあんな風に、前に立つお姉さんを見ながら必死で覚えたなぁってことを思い出しながら私は踊った。
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