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「渋谷課長! これ、プレゼントです!」
妻の波瑠が、そう言って渋谷課長にリボンの掛かった小箱を渡してきた。
「え?」
渋谷課長は、いきなりのことに戸惑った。
「何のプレゼントだ? 誕生日はもう終わった」
渋谷課長は、そう言いながら、一ヶ月前の自分の35才の誕生日の日を思い出していた。
、、、まるで悪夢のような日だった。
県庁の仕事から帰ると、波瑠が、夕食の準備をして待っていたが、テーブルに並んでいる得体の知れない料理に怯えたのだった。
牡蠣飯の中から覗くチョコレート、、牡蠣飯の上に掛けられたヨーグルト、、その真ん中に梅干し、、。
「お誕生日おめでとうございます! 渋谷課長! お誕生日だから渋谷課長の大好きな物ばかりで料理してみました!」
満面の笑顔でそう言う妻に、渋谷課長は心の中で、ため息を吐いた。
いいんだ。
分かっている。
妻の波瑠は、ちょっと変わっているが、私のことを深く愛してくれている証拠なのだ、この不気味な料理は。
渋谷課長は、毎度のことなので、大して驚かなかったのだった。
「で、今日は何故、プレゼントをくれるんだ?」
「今日はぁ〜、何の日ですか? 祝日㊗️ですよね」
「今日は、、勤労感謝の日だが、、」
「は〜い! 当たりです! だから、いつも県庁のお仕事を頑張って、今日も休日出勤した渋谷課長にお疲れプレゼントです!」
渋谷課長は、波瑠から渡された小箱を恐る恐る開けた。
そこには、、。
「蝶ネクタイ? しかもショッキングピンクだ、、」
「そうで〜す! いつも普通のネクタイじゃあつまらないでしょう? たまには、それをして仕事に行くのもいいかと思って!」
渋谷課長は、また心の中で深く深くため息を吐いた。
仮にも公務員である県庁職員の課長が、そんな格好をして行ったらどうなるのだ、、。
そう思ったが、ニコニコしている妻を見て、何も言えない渋谷課長なのだった、、。
「旦那様💘に勤労感謝❣️」
end
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