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「床はね、ちょっと困るのよ。みんなの場所だから。ちゃんと画用紙に描こう、あとで消すのを手伝ってちょうだい」
「ダディ、マミィ。ごめんなさい」
子供たちにクレヨンやおもちゃをしまうよう背を押す。
足元に転がる木製の車を拾おうとして、軽く指で叩いた。
「タッチウッド」
「このおもちゃは、君のお母さんのプレゼントだね。孫たちに幸せになって欲しい。お父さんの分まで、そう思っているんだろうな」
真実を知らなくとも、アツシは分かる範囲で心を汲んでくれる。
ヴァレリーは、彼の両手を握りしめ頬を緩めた。
「私、シナモンティーを入れるわね。後片付けはそれからにしましょう」
今の自分には家族を守ることができる。だから過去を変えられなくてもいい。カイルを救えなかった、幼い頃の自分を許そう。
手に残ったアツシのぬくもりを確かめ、ヴァレリーはクレヨンの花畑に足を踏み入れた。
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