3人が本棚に入れています
本棚に追加
無事に番組を終え、クールだったヴァレリーの表情にゆとりが戻った。アッシュブラウンの髪を綺麗にまとめ、涼やかな美貌は四十代になって深みが増した。人気キャスターとしての地位も、順調に固めつつある。
照明の光が緩み、スタジオにざわめきが戻った。スタッフが忙しく動き始める。
しかし、ヴァレリーは空腹だったはずの胃が重く感じられた。
こんな清潔なスタジオで語っていていいのだろうか、現地の腐臭すら知らないのに。
ヴァレリーは浅かった息を整え、木製のテーブルを軽くノックした。
「タッチウッド」
今日も無事に、報道を伝えるニュースキャスターの使命を果たしたのよ。何でもできるなんて、憐れみみたいな思い上がりはやめよう。
身体より先に心が病んだ人を、嫌というほど知っているのだから。
最初のコメントを投稿しよう!