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そう思った時、一枚の写真に目が止まった。
戦車を踏んづけた象が、煉瓦の壁面にいっばいにペイントされている。暴れ狂う灰色の巨体は今にも動き出しそうに見える。皺の刻まれた皮膚や威厳のある牙など、生き物の質感がリアルだ。特に怒りに満ちたその目は、赤い恒星のように光を溜めている。
戦車と象。その二つのモチーフが、忘れかけた記憶を目覚めさせた。
父さんだ。そんなまさか、ヴァレリーは小さく声を上げた。何十年も前に葬った愛情が息を吹き返し、歓喜のこだまが身体の内側で反響する。
これを描いたのは父のカイルかもしれない。文明に立ち向かう野蛮な象は、抜け殻になって失踪した彼の魂の代わりに、咆えているかのようだった。
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