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不安
何を言い出すかと思えば、ホノカってやつは本当に変だ。
その提示された蝶か蛾かの二択に、僕らが会わなくなる回答が無かったことに安心はしたが、同時に恋人になるという可能性の薄さを悟った。
「……友達のままが、優勢ってことか」
「どうしてそう思うの」
「毛虫が蝶になるイメージがないんだ。青虫は蝶、毛虫は蛾になる。そんな気がするからだよ」
「育ててみないと、わからなくない?」
「それはそうだけどさ」
刺されれば皮膚が腫れそうな毛虫を前にして、ホノカはけろっとしていた。そればかりか、その毛虫の乗った葉の部分を切り取って、僕の前に差し出してきた。危ないっての。
「まあ、四の五の言わずに育ててよ。はい!」
「いや近い近い! というか手、危ないぞ」
「大丈夫大丈夫。ほら、手を出して」
僕はとっさに持っていたスマホを差し出して、その毛虫の乗った葉を受け取った。僕のスマホの上の葉の上で、毛虫はウネウネと顔を上下に動かした。
「ほら、この子も言ってるよ”よろしくね”って」
ホノカはそう言いながら笑った。
そしてこう続けた。
「さあ、蝶でしょうか蛾でしょうか」
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