蝶でしょうか蛾でしょうか

成長

　それから僕は、毛虫を育て始めた。
　倉庫で眠っていた大きなサイズの虫かごを数年ぶりに引っ張り出して、土を敷いて、毛虫の乗っていた葉と同じ種類の葉で埋めた。

　そしてその上に、黒い毛虫付きの葉を乗せた。
　コイツが何になるか、なんの幼虫か、きっと今の時代調べようとすればすぐに分かるだろう。

　でもそれは、この恋の結末を先読みするチート行為のように思えた。
　だからそれはしなかった。

　でもこれだけは調べた。
　蝶と蛾の違いについてだ。大差ないということが分かった。
　とまるときに羽を開いていると蛾、縦に揃っていると蝶。あとは夜行性なのが蛾、昼行性なのが蝶らしい。他にも色々書いてあったが、理解できたのはこの二点だし、それだけ分かれば、恋の結論は導き出せそうだ。

　僕は葉を入れ替えたり、霧吹きで水分を与えたり、とにかく毛虫を大切に育てた。徐々に大きくなっていく毛虫。脱皮したときは死んだかと思って焦ったりもした。

　そしてその間も、ホノカといつも通りに会っていたし、会話した。
　言い出しっぺだというのに、ホノカはほとんど毛虫についての進捗状況を訊いてくることはなかった。なんという勝手なやつだ。

　毛虫はどんどん、成長していった。
　そしてとうとう、身体に糸をまとい、動かない蛹(さなぎ)になった。