結果

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結果

 ある朝――。  ついにそのときが訪れた。いつものように霧吹きをしようと虫かごを見ると、蛹がくっついていた添え木に、羽を生やした虫がぶら下がっていた。 「あ!!!」  思わず声が出た。しかし、その羽化した成虫が蝶なのか蛾なのか判断がつかなかった。色味は少しあったが、まだ全体的に乾いていない様子の半透明、白っぽい色だ。  僕はひとまず学校に行くことにした。きっとその間に、蝶なのか蛾なのかの結論も、僕の恋の結果も、出るだろうと思ったからだ。  ――僕は帰りに、ホノカを呼び出した。そして家に帰ったら結果が出ているということを告げて、ホノカを家に呼んだ。  僕が悲壮な決意とともにそれを言っているのに、ホノカは割とあっけらかんとしていた。よく育てたねとか、そんな感じのことを言っていた。  心臓のバクバクさせながら、部屋に戻って虫かごを見た。  そこには――美しい姿の成虫がいた。  白と黄色を足して二で割ったような色に、黒いラインと赤い模様がある。そんな美しい羽だ。  その色鮮やかな成虫は淑やかに木の枝にとまっていた。  そしてその羽は、閉じて揃っている。  ということは……この虫は、蝶なのではないだろうか。 「ホノカ、これって、蝶じゃない――」  そう言って振り返ったとき、僕の唇が、ホノカの唇で塞がれた。  え、なんだよこれ。  キス? なんで?  やっぱり……蝶だったってことか。  だとしても結果発表が唐突すぎやしないか。
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