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植木さんとの同棲生活が始まってから数週間で、わかった事がある。
「おかえりなさい」と言ってくれる人がいるのは、悪くない。
正確には人ではないのだけれど。
「ただいまー」
「お帰りなさい、好子さん」
今日も笑顔で出迎えてくれる植木さん。
なぜ植木さんが咲いたのかは謎だけど、あの花屋のご婦人が言ったように、なぜか癒される。
植木さんには、着替えの間だけ布をかぶってもらっている。自分の腕で取ることもできるだろうけど、覗かれたことは一度もない。とても紳士だ。
着替えが終わると布を取り、私をずっと見ている。
……きっと、植木さんなりに見守ってくれているのだろうけど、わりと恥ずかしい。
「すみません、好子さん」
「なに?」
「そろそろ、水をいただけませんか?」
「ああっ、ごめん、忘れてた!」
植木さんの食事は水。朝と夜の2回、霧吹きで水をあげる。
水をあげると、とても気持ちよさそうにするから、もっとあげたくなるけど、あげすぎはやはりダメなようで、一度止められたことがある。
そろそろ、植物用栄養剤でも買ってあげようかと思っている。
今度の週末に、ホームセンターでも行ってみよう。
──週末、買ってきた植物用栄養剤をあげたら、植木さんはとても喜んだ。
「ありがとうございます! 元気が湧いてくるようです!」
なんとなく、若々しくなった気がする。
……気がするだけだけど。
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