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私は、豆苗です。
根っこから水を吸うだけで大きく育ちます。私は豆苗育成キットに入れられており、育成キットの中の水を吸って生きています。
女の子が近づいて来ました。この女の子が私の育ての親みたいなものです。
「豆苗さん、ご機嫌いかが?」
女の子は私に話しかけながら、育成キットの水を入れ替えてくれます。
私はこの女の子のために、大きく育とうと頑張っていました。
「ははっ、健気なこった! いずれは食べられるくせに!」
窓辺から声がしました。窓辺には、真っ黒なカラスがいました。
「カラスさん、いきなり何を言うのかしら?」
「事実を言ってるんだよ。お前はあの女の子にとってただの食料だよ。そのうち食べられるのに健気に育っちゃって」
「まあ、私あの子に食べられるの!? うそでしょ?」
「嘘だと思うならそれでもいいんじゃない? どのみちあの女の子に食べられるのは事実なんだから」
「そんな……」
私、食べられちゃうの?あの子の優しい声かけも、水をくれるのも、すべて私を食べるためなの……?
次の日、女の子が私の元にやってきて、
「そろそろ、食べごろね」
と、言ってハサミをかざしました。
私の上半分はハサミで刈り取られました。
カラスの言ってたことは本当だったのね……
私はしょんぼり落ち込みましたが、うなだれる頭はもうないのでした。私の下半分だけがむなしく水を吸っていました。
「やーい、やーい」
カラスが窓辺で笑っていました。
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