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ピグマリオンはギリシャ神話に登場するキプロス島の王様である。
ピグマリオンは彫刻を趣味としており、他に何もいらなかった。
それ故に妻も持たず、恋人を持つことすらなく、女性に興味を持つことはなかった。
しかし、ピグマリオンが彫るのは決まって女性の彫刻。女性に興味を持つことはないと言っていても、心の奥底では女性に対する思いを消し切ることは出来なかったのである。
それどころか「自分の理想の女性」を彫り上げたいと考えていた。
やがて、一本の象牙を手に入れたピグマリオンは女性の姿を掘り上げる。
その姿はピグマリオンが理想とする極めて美しい女性である。
名は「ガラテア」と名付けられた。
ガラテアの意味は乳白色の肌を持つ者、象牙を削り上げて研磨し、作り上げた乙女の柔肌そのままの名である。
ピグマリオンであるが、自らが彫り上げたガラテアに心奪われ惚れてしまった。
昼も夜も想い続けるはガラテアのみ。他になにもいらない。
ガラテアを抱きしめても、冷たく硬い象牙の感触のみ。乳白色の肌が持つ温かみも柔らかさもない。口づけを交わしても、冷たく硬い象牙の感触のみ。
当然、何も反応はない。
これでは哀れな自己満足の人形遊びではないか。どれだけ人形を愛し優しくしても、所詮は人形。
ピグマリオンは虚しさに気が付き、何もしなくなってしまった……
ピグマリオンの治めるキプロス島であるが、かつて愛と美の女神アフロディーテが生まれてすぐに上陸した島。それ故にアフロディーテ信仰が非常に強い島である。
無論、アフロディーテもキプロス島に対しては祝福を与えているし、島民も皆愛している。
ある日のこと、ピグマリオンはアフロディーテに祈りを捧げた。
「アフロディーテ様、どうか私にガラテアに似た乙女をお与え下さいませ」
ガラテアはこの世にたった一つ、唯一無二の美しき芸術品。
これに似た乙女を与えることなぞ、愛と美の女神のアフロディーテからすれば容易いこと。
しかし、ガラテアに似た乙女を与えたところで「象牙を削り出して塑像ったガラテア」ではないし、到底敵う筈もない。
自分で作り上げた彫刻を愛するとは…… 生身の生きた者のみを愛することこそが愛であると思っていたアフロディーテは衝撃を受けた。
これではピグマリオンは報われない。そう考えたアフロディーテは愛するピグマリオンを救ってやることにした。ガラテアを生身の人間に生まれ変わらせることにしたのである。
ガラテアは人間になり、ピグマリオンと共に仲良く暮らしましたとさ……
めでたしめでたし。
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