育てる理由

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 ブランドショップで高級ブランド一式を見繕われた育人は、高級レストランへと連れて行かれた。 普段、このようなレストランに行かない(行けない)育人はテーブルマナーが分からずに恥をかいてばかり。やはり、眞理子の駄目出しが入るのであった。 「まぁ、この手の店は初めてでしょうから仕方ないけど…… 次からは頑張りなさいよ」 「は、はい」 その日より、育人は眞理子の言う通りに日々を過ごし自分を高めていった。  勤務中は眞理子に指名されての(テーブル)での直接指導。休日は眞理子に呼び出されての直接指導。眞理子の呼び出しがない日もゴルフや社交ダンスの指導を受けにカルチャースクールへ。  このような生活を続けていれば、自然に教養や気品も身に付いてくるもの。 このような魅力ある男を女が放っておく訳がない。 育人の指名は自然に増えて行き、ホストの順位もグングンと上げていくのであった。 四年が経過する頃には、No.1ホストは勿論のこと、今や多くの太客を掴み政財界にも顔が利くようになっていた。  それに伴い、給料も爆増。これまでの人生では見たことのない多額の金が入ってくるようになった。無論、その金で自分を高めることをやめることはない。  住居も新宿を一望出来るタワーマンション最上階に引っ越し、一本数千万円は下らない腕時計を腕に嵌め、クルマも海外高級車、余暇はスポーツジム通いで筋骨隆々たるギリシャ彫刻を思わせる肉体美の維持に余念がない。 教養を身につけるために新旧のベストセラーは勿論、古典文学を読む本の虫になることも忘れない。無論、女流作家である眞理子の話についていくためである。  文武両道に優れた一流のカリスマホスト、育人の名を知らぬ者は最早この日本にはいないと称される程である。 そんな育人をこうも育て上げたのは、育人の太客である眞理子が使う金と直接指導であることを知る者は少ない。
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