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育てる理由
歌舞伎町のとあるホストクラブ、そこには一人のホストがいた。
源氏名は育人(いくと)。本名がそのまま源氏名である。
育人はまだ新人故に指名を貰うことが出来ず、待機室でお茶を挽く毎日。
ちなみに年齢は二十一歳とホストの盛り。
店のNo.1ホストの派閥に入り、お零れ同然にヘルプ業務を貰って糊口を凌ぐことしかできない指名ゼロの末席のドンケツホストである。
今日も今日とて、育人はお茶挽きかヘルプ業務。ホストになってBIGになってやると夢を持ち田舎から上京してきたのに、お茶挽きとヘルプばかりではBIGからは程遠い。
そもそも、育人はBIGがどういうことであるかを理解していない。
東京に出て多くの金を稼ぎたい、ホストになってモテたいと言う短絡的な考えしか持っていないのである。
育人の住居は歌舞伎町近くのアパート、ホストクラブの寮である。四人部屋にてタコ部屋暮らし、プライベートもなく、家賃も給料から天引き。
貯金も雀の涙、上京前にアルバイトで稼いだ貯金も背広やアクセサリーや毎日のヘアメイク代で消えていく。
給料体系が指名+歩合のこのホストクラブでは、碌な給料なぞ貰える筈もない。
毎日が炎に燃えた自転車操業。実家の両親も育人がホストで身を立てられていないことを知っており、家業を継ぐために帰ってこいと言っている。
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