第1節 鮮烈な飛び蹴り

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第1節 鮮烈な飛び蹴り

ドンッ 校舎裏、使われていない倉庫に叩きつけられる。 目の前には3人の女。表情は怒り。 また知らないとこでなんかやっちゃったかな~、と思いながらも身に覚えは全くない。 「痛い。何?」 できるだけ穏便にいこうと思い、声を荒らげることなく冷静に答えるが、その態度がまた気に食わなかったらしい。女たちの眉間の皺が濃くなった。 「は?それこっちのセリフなんだけど。アンタ何?あたしの彼氏に手出しといてよくそんな態度でいれるわね!!」 なるほど。この人の彼氏に私は手を出したのか。なるほど。 いやぁ、いつものやつだったか。なんて面白みのない。 いや、手なんか出してないんだけどね。 昔からよくモテたし話しかけられたからなぁ。別に愛想振りまいてるわけでも、話しかけてるわけでもないから、手出したとか言われても私が悪いんじゃないんだけどなぁ。 だけど、恋人を責めるより、私を責めたいらしい。全くもって面倒くさい。 「あなたの彼氏なんて知らないんだけど」 「はぁ!?ちゃんと聞いたのよ!!アンタがコウスケと寝たって!!鹿島さんから!!」 コウスケ誰~。鹿島さん誰~。 「えー、でも知らないんだけど。だって私処女だし」 「ふざけるのも大概にしろよ!!!」 言葉が悪くなる女。それに同調するように周りの女も口々に暴言を吐く。 いや、ほんとに私処女なんだけどな。まじで。 「あのねぇ、証拠は?」 「はぁ?」 「んー、その鹿島サン?て人が、私とあなたの彼氏が寝たって言い出したんでしょ?でも私はそんなことしてない。なら、私を黙らせる証拠、ちゃんとあるよね?ほら、その鹿島サンって人が写真撮った、とか」 ね?と首を傾げると、それが不快だったのか女たちは眉間の皺を一層濃くした。 「鹿島さんが嘘つくわけないでしょ!!?」 おいおい鹿島への信頼すごいな。でも実際その鹿島の言ったこと間違ってるんだぜー。 「鹿島さんはアンタと違って可愛くて優しくて、みんなが守ってあげたくなる子なんだから」 つまり嘘つきお姫様ってことね、はいはい。 その鹿島さんとやらが私になにかの恨みがあるのか、はたまた、ただの見間違いかは分からないが、まぁ用心しとこう。 「この糞ビッチ!!」 バチンッ 私が考え事をしてる間に、言いたいことを言い終えたのはいいが……ほぅ、手まであげられるとは。なんとも許し難い。 「ねぇ、だからさ、私処女だっつってんじゃんよ」 「嘘ついてんじゃないわよ!!」 「まぁ、信じないならいいけど、信じた方があなた達的によかったのに」 「……はぁ?」 叩かれた時に、長い爪が当たったのか、少しだけ頬がジンジンと痛む。 「先に手出したのはそっちだからね」 自分の中の狂気がジワジワと這い上がってきて、ニヤリと笑う。 「なに…っえ!!!」 気づいたときにはもう遅い。
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