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6月になり7月になり、それでも坊やは母さんの側を離れませんでした。
一人前に飛ぶことはできるのですが、お腹が空くとエサをねだりに戻ってくるのです。
そんなことは初めてで、どうしたものかと困っていたホオジロ母さん。
けれど、手のかかる子ほどかわいいのです。
自分よりも3倍も大きな身体をした坊やが口を開け「お腹が空いたよ」とねだれば、エサを取りに羽ばたくことが幸せでした。
坊やのために動き、母子でゆっくりと過ごす時間は何よりも幸せなものでした。
暑い夏の朝のことです。
隣で眠る坊やがガサゴソと動くのに気付き、ホオジロ母さんも目を覚ましました。
「どうしたの? 坊や。もうお腹が空いたの?」
「違うよ、そうじゃないの。ねえ、母さん。聞こえる? あの声」
ウトウトとまだ眠りから覚めきれないでいるホオジロ母さんも耳を澄ませました。
森の奥から響く鳥の鳴き声。
知らないはずなのに、知っている、その声にようやくホオジロ母さんもハッとして目を覚ましました。
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