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羽を膨らまし、興奮をしているような坊やの姿に母さんの胸はざわつき、不安に打ち震えました。
「何も聞こえやしないわ? もう少しだけお眠りなさい、坊や」
ホオジロ母さんは、聞こえないと嘘を付きました。
「聞こえる、聞こえるよ。ボクのことを呼んでいるよ?」
森の奥深くから響くその鳴き声は、坊やの鳴き声にそっくりでした。
「行ってはダメよ、坊や。遠くに行ったら戻って来られなくなるわ」
坊やが声に聴き入る様子に、ホオジロ母さんが不安になっていることに、坊やは気づきません。
「でも母さん。ボク、あの声のひとに会いたいんだよ」
「坊や、行っちゃダメよ」
「ううん、母さん! ボクは、行くよ!」
止める間もなくバサバサと大きな羽を広げて飛び上がった坊やは、2度3度ホオジロ母さんを見下ろすように旋回をして。
――カッコウ、カッコウ
と鳴きながら森の奥へと飛んでいきました。
――カッコウ、カッコウ
森の奥の声もそれに応えるようにして。
二人の鳴き声は嬉しそうに響き渡り、やがて遠くに消えて行きました。
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