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一弥も事務所で、謹慎までには至らなかったが、厳重注意を受けていた。
夜、二人は華井の兄が経営するカフェで落ち合い、今後のことについて話し合った。
「……ごめん星來。僕のせいで謹慎扱いさせちゃって。」
「ううん。こっちこそ。一弥にはずっと迷惑かけっぱなしだもん。」
一弥は目の前に座る星來を前にうなだれた。
「それでね、しばらくは大学でも距離を置いたほうがいいと思うの。これからツアーが始まるんでしょ?ちょうどいい機会だし。」
「…………」
星來との大事な接点ともいえる同級生という肩書。せっかく同じ大学に入学したというのに、結局こんな形になってしまったことが悔やまれるばかりだ。
一弥も、今回ばかりは星來の意見に同意だった。
自分が無理に隣の観覧席まで引っ張っていったのだ。それなのに世間から非難されているのは星來の方。星來が理不尽な目を向けられるのは耐え難いものがある。
しかし。距離を置くのが辛いのも確かだ。
「星來。このまま僕たち、会わないまま終わるの?」
「……大学の、卒業式があるじゃない。」
「それで卒業したら、本当に何もなくなる……。」
接点が、ただ芸能人同士というだけになってしまう。
親友であれ番犬であれ、この先の自分との約束がほしいのだろう。一弥がそれを求めていることは、星來にも手に取るように分かっていた。
だからここで終わらせなければ、この先一生彼を縛ってしまうのだ。
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