02.まるで姉と弟のように

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02.まるで姉と弟のように

 もなかは彩乃が幼稚園に通う頃、この家にやってきた小型犬だ。元は保護犬で、両親が譲渡会から引き取ってきた。それからはまるで姉と弟のように一緒に過ごしてきた彩乃ともなか。彩乃はいま中学二年生だから、十年以上一緒に育ったことになる。  けど、犬の寿命は人間のそれと比べると短い。幼稚園生だった彩乃が中学校に入る頃にはすっかり年老いた穏やかな犬となり、そして今や外を散歩することもほとんどできないくらいに衰えている。  彩乃が幼稚園や小学校に通っている頃は、もなかと一緒に近所を散歩し、公園や川原を走りまわった。けど、今では彩乃の住む家の狭い庭や家の前の道路にたまに出るのがせいいっぱい。  もなかは室内犬で、家のリビングの隅にあるケージで飼っている。けれど、今では家の中を走りまわる体力もない。ケージの中やリビングで寝転がるくらいしかできない状態である。  両親も彩乃も、そんなもなかの寿命を意識しないわけにはいかなかった。中学校や学習塾に行っているあいだも、彩乃の頭には弱りきったもなかの姿が何度も浮かぶばかり。  だから、もなかを動物病院に連れて行くのはひと安心なことでもある。
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