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【プロット】偽りの仮面
古びたアパートの一室で、男は鏡の前に立っていた。
その顔は、見慣れたはずの自分の顔なのに、どこか違うように感じられた。
それもそのはず、この顔は、精巧に作られた仮面だったのだ。
男の名は、影山透。
30歳。
職業は、替え玉。
依頼を受け、ターゲットに成り代わって様々な任務をこなす、
影の世界のプロフェッショナルだ。
今回の依頼は、大物政治家、藤堂啓介の替え玉。
藤堂は、政界の黒幕と恐れられる男で、敵も多い。
最近、命を狙われる事件が相次いでおり、身の安全のために替え玉を必要としていたのだ。
影山は、藤堂の顔、声、仕草、癖に至るまで、完璧にコピーしていた。
藤堂本人と並べても、見分けがつかないほどの出来栄えだった。
「完璧だ」
鏡の中の自分に呟いた。
だが、その心の奥底には、拭い切れない不安があった。
替え玉は、あくまでも偽物。
いつかは、正体がバレてしまう。
その時、自分は一体どうなるのだろうか…。
不安を抱えながらも、影山は藤堂としての人生を歩み始めた。
政界の舞台は、影山にとって未知の世界だった。
だが、持ち前の知性と冷静さで、難なくこなしていった。
藤堂の秘書、水原沙耶は、影山に不信感を抱いていた。
藤堂は、冷酷で傲慢な男だったはずなのに、最近は、どこか優しく、人間味を感じさせるようになっていた。
「何かが違う」
沙耶は、影山の正体に気づき始めていた。
影山もまた、沙耶の鋭い視線に気づいていた。
二人の間には、緊張感が漂い始めた。
そんな中、藤堂を狙う暗殺者が動き出す。
影山は、藤堂の命を守るため、暗殺者と対峙する。
激しい攻防の末、影山は暗殺者を倒すことに成功する。
事件の後、沙耶は影山を問い詰めた。
「あなたは、藤堂さんではないですね」
影山は、観念して仮面を外した。
「そうです。
私は、影山透。
替え玉です」
沙耶は、影山の正体を知って驚きながらも、安堵の表情を浮かべた。
「そうでしたか。
あなたは、藤堂さんとは違いますね。
あなたは、もっと温かい人です」
影山は、沙耶の言葉に心を打たれた。
偽物の仮面を被り続けてきた影山にとって、沙耶の言葉は、初めて向けられた本物の言葉だった。
替え玉の仕事から足を洗い、新しい人生を歩み始めることを決意する。
偽りの仮面を捨て、本当の自分として生きていくために。
そして、沙耶は、そんな影山を優しく見守っていた。
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