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一ヶ月前、住んでいるマンションの隣に女が引っ越してきた。
挨拶もなく、その姿もちらっと見ただけだ。
あたしと背格好はよく似ていたが、顔を見ることはできなかった。
顔、、。
結婚してからもう、あたしは四度も整形手術を受けている。
結婚して十年経つ夫が、どうしても整形をしてくれと懇願するからだった。
あたしは、応じた。
もともと容姿には自信がなかったので、整形手術を受けるたびに美しく変わっていく自分を褒めてくれる夫に、ますます愛されていると実感した。
そんなある日のことだった。
夫が仕事から帰って来る後ろ姿が見えた。
あたしも丁度、買い物から帰宅しようとしていたところだった。
夫が、家の前に来て、そして、、。
自分の家を通り過ぎて、隣の家に入った!
えっ?
どういうこと?!
家を間違えたの?!
あたしは、夫が入った隣の家のドアの前に立ち尽くした。
この家には、あの、謎の女が住んでいる。
あたしは、勇気を出してチャイムを押した。
しばらくして、ドアが開いた。
そこには、下着姿の夫がいた。
「えっ?! あなた、何してるの?! そんな格好で!」
あたしは訳がわからなかった。
まさか隣に住む女に、痴漢行為でもしようとしているのか?!
その時、部屋の奥から、女の悲鳴と共に真っ赤な炎が、吹き出して来た。
あたしも悲鳴を上げた。
「助けて! あなた!」
あたしは、夫に助けを求めた。
しかし、夫は、部屋の奥へ走って行った。
そして、同じく下着姿の女を抱えて出て来た。
その女を見て、あたしは驚愕した。
女は、私にそっくりだったのだ。
いや、そっくりなんてものじゃなく、瓜二つだった。
「どういうこと?!」
あたしは女を大事そうに抱いている夫に訊いた。
夫は、あたしを冷たく見て言った。
「お前の役目は終わったんだ。俺はこの人と一緒になれなかったから、仕方なくお前と結婚して、お前をこの人そっくりにさせて代わりにしたんだ。でも、もうこの人は離婚できて自由になったから、お前は用済みだ。さっさとどっかへ行け!」
あたしは、愛されていると勘違いしていた、ただの似せ者(ニセモノ)だったのだった、、。
end
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