自由庭園『記憶と過去』

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自由庭園『記憶と過去』

 魔物がヒトを支配したかの時代に、テイルという名の少年がいた。双生の弟は干ばつを鎮める為の贄となり、両親も戯れに殺された、天涯孤独の少年だ。  滅んだ村で立ち尽くすテイルに、旅の者が語りかける。 『お前はいったい、何を望む?』  旅の者は、答えをあらかた予測していた。家族を追って死にたいだとか、村の仇を討つだとか、そんなありふれた答えを。 『よろずの花が咲き誇るような、みんなが笑顔でいられるような、そんな国を作りたい』  しかし、返ってきたのはそんな夢物語。  旅の者は冷笑したが、どこか興味を惹かれたのも事実だった。  テイルは旅の者に、共に旅をする事を申し出る。旅の者は自らをゼノと名乗り、その提案を呑んだ。  後に、少年テイルは仲間と共に、魔物の国、魔星国を打ち倒す。そして、十の種族、十二の庭園で構成される〝万華王国〟を造り上げた。  これは、記録も残っていない程の昔話。  今から語られるのは、あれから幾星霜の時が流れた、現在のお話だ。
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