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この庭園の出入り口だという昇降機は、小屋を出てまっすぐに歩くと、すぐに見つかった。
今にも壊れそうな、大きくてボロい、野ざらしの昇降機だ。上が見えない程遠いのも相まって、目的地まで無事に辿り着けるか不安になる。
……ゼノがなんのためらいもなく乗ったから、テオも続くしかなかったのだが。
ガタガタと音を立て、扉らしい扉のない昇降機が動き出す。あっという間に地面が見えなくなった。
「────そういや、庭園ってなんだったか? ここは自由庭園……だったよな」
ふと、思い出した最初の疑問を投げかける。
ゼノは、そうだ、と返して、鞄の中からシワだらけの地図を取り出した。ゼノはその地図の右下──Freeと書かれている場所に指をさす。
「ここが今いる場所、自由庭園だ。この王国には十二の庭園があって、それぞれ文化が違う。俺達が目指すのは学術庭園。……ここだ」
言いながら指を動かして、左の真ん中辺り──Learningと書かれた場所を指さした。
「ここに行く為にも、まずは魔法庭園で物資を補給する。急げば一日で行ける……はずだ」
ゼノはトントンと、Freeの文字の横──Magicと書かれた場所を、指先で軽く叩く。
テオはなるほど、と想いつつ、女の言葉を思い出していた。
〝キミの記憶はボクが隠した。十二の庭の、心の中にね〟
十二の庭とは、ゼノが言った庭園の事で間違いないだろう。では、心の中とはなんだ? ……まだ、分からない事だらけだ。
ガタン。ひときわ大きな音がして、昇降機が止まった。
外に出ると、空が見えた。赤い空だ。朝焼けか夕焼けか、その時は分からなかったけれど。
「行くぞ。こっちだ」
「おー、しっかり案内頼むぞ!」
旅の始まりは、そんな言葉だった。
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