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 ケイトが造られた物だなんて、よく理解している。  何故なら、ケイトの作成を依頼したのは、私だからだ。  ケイトの姉に、クライアントが両親だと言ったのも私。死人を身代わりにするのは少しばかり心が痛んだが、愛する人を取り戻す為は、致し方ないと思った。  ケイトが一年前に事故で亡くなったのは本当だ。ケイトは両親と家族旅行に出かけた。  山道をレンタカーで走った時に、土砂崩れが発生した。ケイト達はそれに巻き込まれてしまった。  天災に巻き込まれてしまったのは、不幸の事故だ。こればっかりはしょうがない。頭では理解していたし、納得しようともした。けれどその事実を受容する事は出来なかった。  私は件の製造会社に、ケイトの製造を依頼した。初めて会った時──大学入学当初のケイトに模して造ってもらったのだ。  それから私とケイトはイチから愛を育み始めた。確かに、身体つきは似ているし、肌も人工皮膚と同じものを使っているから、一目ではヒューマノイドと気づかない代物だ。  誰かに正体を告げなければ、自分が造り物だなんて気づかなかっただろうに。余計な事を言ってくれた。だがまぁ、ケイトは私がクライアントであることまでは気づかなかったようだ。 「ヒューマノイドとか関係ない。どんな姿でも、ケイトはケイトさ」  私はケイトを抱き寄せた。 「愛しているよ、ケイト」  私の腕の中でうまるケイトに囁いた。  そうだ。このケイトはホンモノだ。  そしてこの愛もまた、ホンモノの愛だ。
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