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「ウチ、ケイトじゃないらしい」
今朝、ケイトが突然そんな事をぼやいた。
泡立った歯磨き粉が服の上に落ちた。
「……君はケイトだろう?」
「そうだけど、そうじゃないというか……」
ケイトは歯切れ悪そうに呟いた。このまま大学に行っても、なんにも手につかなそうに見えた。
「今日は家でゆっくりしようか」
私が提案すると、ケイトは静かに頷いた。
リビングに招いて、ソファに座らせた。最近寒くなってきたので、ホットミルクを用意して、ケイトに差し上げた。
「それで、君はケイトではない、と」
隣に座って尋ねると、ケイトは頷いた。
ケイトは今、私と同棲している。昨日だって一緒のベッドで寝た。毎日会っている顔を間違えるはずかない。
私がそう主張すると、ケイトは首を横に振りながらそうじゃないのと答えた。
「ウチ……ううん、ケイトはもう、この世にはいないんだって。お姉ちゃんが言っていたんだ」
「この世にいない?詳しく聞いても?」
ケイトは頷いて、私があげたホットミルクをテーブルの上に置き、その時の出来事を話し始めた。
「先週、出かけていた時に、お姉ちゃんとバッタリ会って、少しだけ話したの」
「お姉さんとは仲良くなかったんじゃなかったっけ」
「うん。ウチが大学に入ってからは、なんか会話が途切れ途切れで……また仲良くお喋りしたかったから、どうして避けるのって聞いたの。そしたら、ケイトは既に交通事故で亡くなったんだって。パパとママと一緒に交通事故に遭ったんだって言ってたの」
「それなら君は、いったい何者なんだい?」
「ウチは、そのケイトを模した、ヒューマノイドらしいの」
「ヒューマノイド?」
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