0人が本棚に入れています
本棚に追加
「人間そっくりのヒューマノイド……かぁ」
私は返答の言葉に困ってしまい、間延びしたコメントしか出来なかった。
「ごめん」
ケイトが小さく謝った。
「ウチ、ホンモノのケイトじゃなかったんだって。お姉ちゃんも言っていた。貴方はニセモノだって。ホンモノのケイトじゃないって。自分でもびっくりしちゃった」
ケイトの声が震えていた。今にも泣き出しそうな声だった。こんな声が、造られた物から発せられるのか。
私はどうも、彼女がニセモノだとは思えなかった。
「私はヒューマノイドのケイト……あなたの事しか知らない。私にとっての、ケイトはあなただけだよ」
私はケイトの肩に手を置いて話した。
「初めて出会った時のこと、覚えている?」
私の問いにケイトは小さく頷いた。
「飲み会で意気投合して、一緒に映画を見に行くようになったんだよね」
「そうそう。その時、楽しそうに話すあなたに私は惹かれたの」
ヒューマノイドということは、元の性格や思考がプログラムされているのだろう。
だが、多数の人との会話を経て、学んでいくヒューマノイドは、ほぼ人間に近しかった。
思えば、私はそんなところを含めてケイトの事が好きになったのだ。
「私は、私が出会ったあなた自身を好きになったんだよ」
優しく教えるようにケイトに告げた。本当にそう思っていると伝わるように。
ケイトにはそれが伝わったようで、彼女は瞳から透き通った涙を流した。
「おいで」
私はケイトに対し腕を伸ばした。彼女は私の腕に飛び込み、声をあげて泣いた。私は微笑みながら、彼女の背中を優しく叩いた。
最初のコメントを投稿しよう!