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もともと、男ばっかりの4兄弟だけで暮らしていた頃はそれでも良かった。
クリスマスなんか、気にしても気にしなくても、誰にも支障はなかった。
だけど今は鈴音がいる。
鈴音は春一の婚約者で、その婚約者と過ごすクリスマスの夜を、鈴音が気にしないわけがない。
「……すまない」
夏樹の腕の中にいる鈴音に、春一は頭を下げて謝った。
あまりの春一の朴念仁ぶりに夏樹は頭を抱えた。
せっかく婚約までこぎ着けたのに、少しは鈴音との仲を進展させようという気がないのか、この兄は。
そんな感じで、さんざっぱらに夏樹から説教されたというのに、その次の日の夜、春一はぐでんぐでんに酔っ払って帰ってきた。
「夜分にお邪魔してすみません」
ひとりでは立ってもいられないらしく、長い髪の女性に肩を借りている。
いかにも仕事のできそうな美人だ。
美人はインターフォンに向けて告げた。
「棚町です。今夜はずっと来生さんと一緒だったのですが、ちょっと飲み過ぎてしまったみたいで」
鈴音は慌ててドアを開けた。
「どーも」
春一を抱えた棚町はそっけなく言った。
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