育てる。

1/1
前へ
/1ページ
次へ

育てる。

 育つ。 ● 「ほらあ、おいで! だっこしてあげる!」 「おねちゃ、だっこ!」 「あらあら、仲いいわね。本当の姉妹みたい」 ●  育てる。 ● 「お姉ちゃん、見て! 幼稚園これでいくの!」 「可愛い! すごく似合ってる!」 「えへへ!」 「友達いっぱいできるよ!」 「ほんと?」 「ほんと!」 「やったあ!」 ●  育っていく。 ● 「う、うう……ひっく、ううう」 「どうしたの?! 泥だらけ!」 「帰り、クラスの男の子たちに突き飛ばされて……うえええ!」 「ひどい!」 「お姉ちゃああああん! うえええ!」 「よしよし、ツラかったね。怖かったね。お母さん! お母さん!」 ●  育て。 ● 「うふふ、可愛いなあ」 「どしたの? スマホ見てニヤニヤして」 「何度見ても癒されるなあと思って。ほら見て」 「どれどれ?」 『わんこ君わんこ君、さあお手をしてごらん? おお、いい子だねえよくできましたワン。もっふもふー、もっふもふー。せっせっせー、のよいよいよーい』 「?!」 「ふふふ、可愛いなあもう。猫のもあるよ?」 「あるよ、じゃないよ! 消して、いやスマホ寄こせえ!」 「ダメだよ、私の宝物なんだから。消したら泣く」 「大げさだよ!」 「ほんとだよ? サチは私の宝物なんだから」 「ふぐう」 ●  育っていけ。 ● 「さ、くら、姉ちゃん? 何で? 何で何で何で? 嘘でしょ? ねえ、起きて?」 「もうわかったから。降参。お手上げ。白旗……ねえ、充分驚いた。心臓飛び出るかと思った。でもいい加減にしないと怒るよ? ねえ! ねえってばあ! 起き……て? 起き、てよ……」 「サチ、もうやめなさい!」 「離せ! 誰だ、誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ! 何でこんな……う、うう。うわあああああああああああ! あああああああああああ! あああああああああああああああああああああああああああああああっ!」 ●  いっぱい喰ったか?  まだまだ足りないよな。  喰えよ、遠慮すんな。  自前の憎しみだ、まだまだあるぜ?  もっとだ、もっと育て。    育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て育て     ● 「お、お目覚めか。いいご身分だな?」 「うう……お前は」 「誰が喋っていいって言ったんだよ! 黙ってろ!」 「…………」 「ま、両手両足縛られてスタンのバチバチ見せられりゃ怖えよなあ。わざわざ自分の手口をベラベラと字に起こしてドヤ顔で語る作家先生さんよ」 「…………」 「ダンマリ決め込んでんじゃねえよ! は、は~ん、黙秘権ってやつか? 時間稼げるって思ってんのか? ざ~んねん。絶対にはねえ」 「あ、アンタが黙れって言ったから……」 「お? 生意気言っちゃってくれんじゃねえか」 「何を勘違いしてるのか知らないが、こんな事絶対許されるものか! 私には警察と裏社会の知り合いが……」 「お前の自己紹介なんざ、どーでもいいんだよ」 「なっ……?!」  さあ、出番が来たぜ?  今まで喰ったもん、全部吐き出しな。    存分にな。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加