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シロ
モモが7才の時です。
小学校1年生になって、お友達が出来て、もうすぐ夏休みが始まるって頃のことでした。
5月が誕生日のモモは、お母さんが、大事な行事なんだよ、と言っていた「しちごさん」の準備をしていました。
しちごさんの日の可愛い着物が決まって、写真を撮る日をとっても楽しみにしながら寝ようとした日の夜。
歯磨きをしていたら、モモの口から白いものがポロっと落ちました。
全く痛くなかったけど、白いものが落ちた時はいつもお口の中は真っ赤になります。だからモモは慌ててうがいをしたのだけれど、出てきたのは真っ白な泡を含んだ水でした。
「あれ?」
てっきり、真っ赤なお水になると思っていたモモはビックリしながら、とりあえず落ちた白いものを拾いました。
やっぱり、モモの歯、でした。
でもそれはいつも抜ける歯とは違ってちょっと黄色かったりしていなくて、赤いものもついてなくて、とってもとっても綺麗な白色でした。
嬉しくなったモモは、お気に入りのピンクのガチャガチャのカプセルにその歯を入れました。
これだけ真っ白なのだから、きっと特別な歯だと思ったの。
だからモモは、この歯に「シロ」って名前をつけたんだ。
「おやすみ、シロ」
モモは、ピンク色のガチャガチャボールに入った自分の歯が見えるよう、ピンクの部分を下に、透明の部分を上にして机に置いて、歯が見える位置にチュっとキスをしました。
いつもお母さんが私にしてくれる「大好き」のキスです。
次の日、シロはおしゃべりをしました。
「おはよう、モモちゃん」
「おはよう、シロ」
嬉しくなってモモがチュっとすると、シロは顔はないけど嬉しそうにゆらゆら揺れて、動かなくなります。
多分、寝たのかな?
モモが学校に行って、帰ってきた時も、シロは動かなかった。
朝の会話は気のせいだったのかな?と思って晩御飯を食べて、お風呂に入って、歯磨きをして。それで寝る準備を整えたら、シロがまた喋ったの。
「きょうはたのしかった?」
「たのしかったよ」
「なにしてあそんだの?」
「モモはお友達と鬼ごっこをしたよ」
そうして1日の話をしたら、シロが「ねむくなっちゃった、おやすみ」て寝るの。
そしたら、モモも一緒に寝るの。
シロの入ったカプセルは何だかとっても温かくて、握っていると落ち着くから、モモはカプセルにチュってした後ぎゅっと握りしめながら寝るんだ。
この日から、シロはモモが育てるって決めたの。
だから色々聞いたよ。
シロは、お腹は空かないんだって。
シロは、飲み物もいらないんだって。
シロが欲しいのは、モモの大好きのキスなんだって。
だからモモは、お話をして、「おやすみ」ってシロが言ったらキスをするの。
大好きって気持ちをいっぱいこめてキスをするの。
カプセルが空かないからカプセルごしだけど、シロはそれで満足みたいで、次の日もまた同じようにおはようの朝のあいさつと寝る前のおしゃべりをするの。
短い時間しかお話できないけど、その短い時間がモモは大好きなの。
そのまま夏は過ぎて、秋、冬。
ずーっと、シロはモモと一緒に寝て過ごしていたよ。
だから、シロはモモが育てた大事な大事なお友達なの。
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