シロ

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 そんな1年生を過ごしていたモモは、2年生になったよ。  その時にモモは口からいっぱい血が出てきてね。  歯が抜けたわけじゃないのにいっぱい出てきて苦しかったんだ。  パパとママが泣いていたのを覚えているよ。  シロが入っているカプセルが汚れないようにポケットに入れたけど、ずっと苦しくて、言葉をしゃべることができなかったの。  それでね、病院に行ったら、モモは病気だって言われたの。  もしかしたら、明日いなくなるかもだって。  何の病気かは難しくてわからなかったけど、先生は「見つけるのが遅かった」って言ってたよ。  モモは、ずっとシロがいるガチャガチャをポケットに入れていたからね。  モモがいなくなったら、シロに会えなくなるし、シロが1人ぼっちになるかもしれないと思ったんだ。  だから、シロにごめんねって言ったの。  そしたら、シロは言ったの。 「お別れの前に、願いを一つ叶えてあげるよ」  シロって凄いなぁ。  お願いを叶えられるんだって。  それならって、モモはお願いしたの。 「ママのお願いを叶えてあげて」  モモの病気が見つかってから泣いて、悲しそうで、辛そうなママ。  モモが起きたら嬉しそうに笑うけど、ずっと泣いているのか目が真っ赤。  辛そうで、今にも倒れそうなママ。  だからモモは、ママが元気になるような願いを叶えてほしかった。 「わかった。じゃあ、最後にキスをして」  シロが言うからモモはいつものようにキスをしたんだ。  そしたら、シロは言ったの。 「直接してほしいな」  そういえば、シロが喋れるようになってからモモはカプセルを開けたことが無かった。  開けようとした時もあったけど、硬くて開けられなかったんだ。  まるで、くっついちゃったみたいに。  だから、「多分開かないよ?」て言いながら開けたんだけど、カプセルはパカって簡単に開いたの。  吃驚したけど、モモの口から落ちてから1年ぶりに触るシロはつるつるぴかぴかで心地よかった。  見た目はモモの歯なのに、なんだか別の生き物みたいだった。  白いお星さまとか、妖精さんかなって、モモは思ったよ。 「シロ、大好き。元気でね」  モモは、シロにキスをした。  つるっとしているシロは、あったかかった。 「ぼくも大好き。モモちゃん。元気でね」  シロはモモの手からぴょんっとジャンプするとモモのおでこにこつんっと当たった。  なんとなく、チュって音がした気がした。  そしたら凄く凄く眠くなって。  気づいたら、朝だった。 「シロ?」  シロは、いなかった。  ピンク色の空っぽのカプセルだけが、枕元にあった。  一度開けたことで、シロが何処かに転がっちゃったのかと思ったけど、どこを探してもいなかった。 「あ、きっと、お母さんのお願いを叶えにいってくれたんだ」  シロがいないことはとっても寂しかったけれど、パパがモモが寂しくならないように白い犬のぬいぐるみを置いてくれたから、今日はそれをぎゅぅっと抱きしめたんだ。  カプセルも持ってたけど、いつもあったかいカプセルは、今日はとっても冷たかった。  そして、その日検査をしたの。  モモの命はあと数日だから、検査をしなきゃいけなかったんだ。  そしたらなんと、びっくり!  モモの病気、治っていたの。  モモもパパも病院の先生もビックリしてたけど、奇跡だ!ってすっごく喜んでいて、ママも喜んでいたけど。  ママがモモと2人きりになった時、言ったの。 「ごめん、ママのせいで、モモちゃんのお友達いなくなっちゃった」  どういうことかわからなくてママに聞いたらね。  本来モモの寿命は、今日の昼までが限界だったんだって。  その寿命を引き継いだシロが、さっき、ママの願いを聞いていなくなったんだって。 「嘘だよね?」  モモが尋ねると、ママは「ごめんなさい、ママはモモが一番大切だから」とずっと泣いてたの。  ぎゅっと抱きしめてくれるママは、とってもあったかかった。  あ、そっか。  ママが元気になるための願いは、モモが元気になることだったんだね。  だったら、モモは泣いちゃいけないよね。  モモは、笑わなきゃ。  シロが叶えてくれた願いだから。  冷たくて、何も入っていないカプセルを持ちあげた。 「大好きだよ、シロ。願いを叶えてくれてありがとう」  いつものキスをする。  シロはいない。  でも、頭の上で、声が聞こえた。 「大好き、モモちゃん」  辺りを見回したけど、シロはいなかった。  カプセルをもう一度見た。  カプセルの中は何もいなかった。  1年生の時は温かかったカプセルは、モモの手の中でひんやりとしていた。  まるで氷みたいに冷たいカプセル。  モモはカプセルを開けてみた。  パカっと簡単に開いた。  また、閉じた。  カポっと、音がする。  シロとキスをした最後の日にしか開かなかったカプセル。  パカ  もう一度開いてみたら。  カプセルも、消えちゃった。  確かに持ってたのに、目の前で消えたの。  吃驚して手をグーパーってしてみたけど、カプセルもシロも、もうどこにもいなかった。  シロ、いなくなっちゃった。  私は何度も手をグーパーグーパーして見続けて、それでママを見たんだ。  そしたらよくわかんないけど、泣いちゃった。  もう2年生のお姉さんなのに泣いちゃったの。  赤ちゃんみたいに、ワンワン、ワンワン。  ママはそんなモモをぎゅぅっと力強く抱きしめてくれた。  あったかかった。  とってもあったかい。  でも、私の手の中は何度グーパーしても何もない。  昨日まであったかかったのに。  冷たい感触もあったのに。  今はもう、何もない。  次の日、モモは退院した。  なんとなく振り返って空を見上げた。  雲には、シロそっくりの形をした雲があった。  もしかしたらシロかもしれない。  退院おめでとう、てお祝いしに来てくれたのかもしれない。  だから私は、お空に手を振ったんだ。 「バイバイ!」  ちょっとまた涙が出ちゃったけど、折角シロが願いを叶えてくれたんだもの。  モモは、ママが元気になるためにいっぱいいっぱい笑顔で生きていくね! fin
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