こどくな趣味

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 興味のない者には特異で気色の悪い行動に映るかも知れないが、こうした有毒生物を育てることは私の趣味の一環である。  他にもいくつかの有毒生物を家で飼っているのだが、故郷を離れ、都会で独り暮らしをしている私には迷惑をかけるような家族もいない。  それに恋人も友人もいないため、家に遊びに来るほどの関係性を持つ者も皆無であり、そうした危険生物を飼うことにもなんら障害はないのである。  まあ、孤独な男の風変わりな趣味と、笑いたい者は笑うがいい。別に他人に理解してもらわなくとも、私は私が満足できれば一向に構わないのである。 「……うん。元気そうで状態も良い。それではこれをいただいていこう」  鮮やかな黄色をしたそのカエルが一目で気に入り、一応、隅々まで観察して健康状態をチェックした後、私はすぐさまその購入を決めた。 「まいどありぃ」  ピアスだらけの顔に似合わず、にっこり微笑むパンクな店主に虫籠ごと梱包してもらうと、それを持って私は店を後にする。  そして、下車した駅から再び電車に乗り込むと、寄り道は一切せず、真っ直ぐ家へと暗い夜道を急いで帰った。 有毒生物を手にしたまま、どこかへ寄るのはさすがに憚れるということもあったが、早くこのカエルを仲間たち(・・・・)の輪の中へ入れてやりたいという気持ちの方が強い。  静かな住宅街の、どこにでもある普通のマンションの一室に戻ると、着替えも後回しに生活用の部屋とは別に設けた趣味の部屋へと急ぐ。  引戸を開け、壁際にあるスイッチをパチンと押すと、数度の明滅を繰り返した後に黄色い白熱球の明かりが室内を柔らかく照らし出す……そこには、集合住宅の如く積み上げられた幾つもの水槽の中に、我が愛すべき猛毒生物達が各々一種づつ入っている。  水槽とはいえ水を張っているわけではなく、マムシの水槽には石を組んだ小さな岩場を、タランチュラのものには青い葉のついた木の枝を、アメリカドクトカゲやサソリのには砂漠のように乾いた砂地を…と、それぞれの棲息環境を再現しているものである。
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