立派な幽霊

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 〇月×日  佐東さんは幽霊なのに、およそ幽霊らしくなかった。  塩をまいたこともあったが、効き目はなかった。  俺がテレビドラマを見ていると、うしろからこの俳優の演技は大根だとか言ってくるし、俺の業務効率が悪いだのと評価をしてくるし。まあ、とにかくうるさかった。幽霊って、静かに佇んでるもんじゃないのか。普通。 「つまり、あれだ。佐東さんは幽霊らしくないんだよ」  この日は給料日だったので、俺は一人で居酒屋にきていた。  周りががやがやと騒がしいおかげで、一人でしゃべっていても怪しまれなかった。傍から見れば完全に不審者だ。 「未練タラタラなのに?」 「自分で言いますか。ま、それは置いといて。例えば、人魂とか出せます?」  かぶりを振る佐東さん。 「じゃあ、うらめしやーとか言えますか」 「うらめしや」  ぜんっぜん怖くない。 「ってか、今どきそんなテンプレ幽霊なんかいないよ」  ごもっともな意見であった。
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