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私は月目。高貴なる毛皮を持つ一族の末裔である。ニンゲンは私たちのことをネコと呼ぶ!
来たるべき未来、我が一族が世界を平和に支配する時代のために、ここに記録を残すものとす。
愚かなるニンゲンどもは我々が言葉を理解できないと勘違いしているが、現実はこれこの通り、文字の読み書きはできるしニンゲンが普段何をしゃべっているかも、すべて把握しているのである。
その力でニンゲンを支配することも不可能ではない。だが高貴なる我々に労働などは似つかわしくなく、ニンゲンに働かせて快適な環境を作らせているのである。
前置きが長くなった。ここで私が記録したいのは、我が不肖なる飼い主のことである。
ネコが自分を養うニンゲンを確保する手段は幾つかある。
まず調査部門がプロジェクトチームを組み、ネコを養育できるニンゲンの家庭を探す。家族構成、持病、経済的な豊かさ、そして何よりネコに対する潜在的な忠誠心が調査され、申し分なしと判断された家庭にターゲットを定める。
そして、相性が良いと推測されるネコが選抜され、ターゲットとなった家庭への潜入作戦が実行される。
私の場合、ニンゲンの若い夫婦の家庭を狙った。雨の日に、夫婦が外出先から帰ろうとしたタイミングで、さも偶然を装って彼らの目の前に現れ、倒れ込んだのだ。
狙い通り、その夫婦は私を「食い詰めた野良猫」と判断して家の中に招き入れ、そのまま飼い主となった。
推測されていた通り、その夫婦は理想的な下僕であった。
住居は清潔で暖かく、食べ物は滋養に満ち、遊びにも付き合ってくれる。私を担当してくれたプロジェクトチームの有能さには、感謝するしかない。
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