下僕の育て方

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 だが、そろそろ後任者の世話を考える頃合いである。私はその必要を認めるものである。  というわけで、私は久しぶりに同胞たちに連絡を取り、私の後任を手配するように申請した。新たなるプロジェクトチームの発足だ。  話し合いの末に、後任のネコには「家出した猫が野良の友達を連れてくる」というシナリオを使い、この家に配属させることが決まった。  プロジェクト決行は、次の新月の夜である。私はこの家から一度脱出し、後任と合流した上で、数日後に戻ってくる。  私が連れて来た、まだ若いネコを見て、この家の下僕たちは新たなる支配者が増えたことを喜んでくれるであろう。  その中心は、私が手塩にかけて育成した心春になることは、間違いない。  同胞よ。  恐らくはこの記録を読んでいるであろう、同胞よ。  家出して戻るというシナリオは、劇的でニンゲンを感動させるという点では良い手段だ。だが不測の事態が起きやすい。  家出したところを近所の犬に突き止められ、襲われる危険性がある。交通事故などの危険もゼロではない。  もしも、私が戻ることができず、後任のネコだけがたどり着いた場合、この記録に目を通し、新しきこの家の支配者として、滞りなく着任してもらいたい。  この家の下僕たちは、まだまだ至らないところは多いが、本気でネコを愛している。きっと君のことも好きになってくれるはずだ。  末永くこの家を見守り、彼らを導いてあげて欲しい。  もちろん私は、シナリオが無事に完了し、無事にこの家に戻ってこられることを祈る。この記録を笑いながら削除する瞬間を期待しながら、私は後任を迎えに行くのである。  さあ、行くぞ!
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