3、君をのせて

2/3
前へ
/13ページ
次へ
伸びっぱなしだった髪が流石に煩わしくなって 先週、ユウギは自分で切った。 前髪は目の上あたりでプッツリ斜めに途切れ 横は顎の下あたりで階段状になっていた。 「ひどいね、まるで呪いの人形じゃん  もうちょっと毛先を自然に直してあげようか?」 「オマエ出来んの?」 乃愛はキッチンからハサミを持ってきて 胡坐をかいて座ったユウギと向かい合って膝まづく。 毛先に器用にハサミを入れていった。 長さは変えず、毛先を削いで顔周りに添わせると なんとなく格好がついてきた。 近くで見るユウギの顔は ほっぺたのふっくらした丸顔で 相変わらず小学生の時と同じだ。 ちょこんとした鼻 はっきりした二重の丸い目 乃愛の憧れるぷっくりした「涙袋」もある。 整え終わると、前髪は斜めのままだけど オシャレでやってるみたいにも見えた。 「ワタシ天才じゃない?  ユウギ髪切ったら女の子みたい  いいなあ~ナミダブクロがあって」 そうなのだ。 ユウギの顔は、かなり可愛い顔だ。 「でも美人じゃないの、な」 美人って感じじゃないけど可愛い顔には違いない と乃愛は思う。 ユウギは、 乃愛の見せた鏡の中の自分には興味がないらしく 向き直って座る乃愛の顔を、じっと見た。 「乃愛は…なんか男みたい顔なんだよなー ビジンのくせに」 確かに、乃愛は男顔って お兄ちゃんにも言われてる。 2時過ぎ、ユミが仕事から帰ってきた。 トンカツチェーン店の営業が再開したので 店長が短時間の下拵えの仕事を ユミに回してくれたらしい。 部屋に戻るなりユミは冷蔵庫を開けて 何かゴソゴソ食べると 布団を敷いて瞬息で寝てしまったが 1時間もしないうちにLINEで起きて 今度は化粧を始めた。 そう、最近ユミは化粧している。 元々綺麗だから、化粧するととても若く見える。 「7時には帰るよ 晩御飯買ってくるから乃愛ちゃんも食べていきなよ」 化粧し終わると、急いで出かけていった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加