1、会話

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「じゃ、ユウギんちの10万円 マルチに取られちゃうの?」 乃愛はヤキソバを頬張りながら ソファに突っ伏したままの智子の脇に来た。 「知らないよう…あーヤダヤダ 聞かなきゃよかった」 「なんでよ?聞いて良かったじゃん 後で行こうよ、ユウギんち」 「イヤよお あのマルチと関わりたくない二度と アレ多分宗教だし」 「ねえたっらあ!ご飯食べたら行ってみようよ ユウギんち電気止められそうなんだよ?  10万円って大切じゃん!」 「でもさコロナで失業したら 電気や水道の延滞は待ってもらえるんだよ確か」 「じゃ、それも教えに行こうよ!」 「無理。 お母さん今日クタクタだし…明日も仕事だし。 ハッキリ言って他人ンチの心配なんてしてる余裕ない  毎日パート行くのに精一杯だわ。 ユミさんにラインなんかしたのが間違いだった。  乃愛もユウギんちのことに首突っ込みすぎ  あんた自分は大丈夫なの?  夏休みの課題やってんの?」 話が妙な方向に向いたので乃愛は返事をせず 焼きそばを持ったまま 麦茶を取りに冷蔵庫に入ってドアを開けた。 白く明るい冷蔵庫の中で プツン、とアブクが破裂けるような 小さな音がした。 (ん?) 冷蔵庫の中を覗いて見回す。 クリオネの瓶にちょうどライトが当たって 天使がキラっと光った。 半分濁った水の中でいつも沈んでる天使が スポットライトを浴びたバレリーナみたいに フワフワと羽を広げて瓶の真ん中に浮き上がっている。 (なに?これ)
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