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 メには数え切れないほどいろいろな事を教えてあげたけれど、中学に入ってからは僕の方もメを頼るようになっていた。良く日常の相談役になってもらっていたのだ。  困った時や迷った時、文字通り人にいえないような悩みを抱えた時などは、とりあえず彼に意見を仰いだ。  メは早朝だろうが深夜だろうがいつでも話を聞いてくれるし、何より人ではないから気兼ねなく本音をいえる。とても稀少な存在だった。 『コウヘイ。悩むというのは非生産的な行為だと思いますよ。何か悩んでいる間、コウヘイは何もしません。その間に課題のひとつでも終わらせた方が有意義だと思うのですが』 「他の大事な時間を割いてでも、いろいろ考えてしまうのが人間なんだよ」 『なら、コウヘイのしょうもない悩みの解決案はわたしが適当に考えてあげましょう』 「しょうもなくない」 『ほら。さっさと課題に取りかかってください』  メはそんな説教をしてから、いつも僕になんらかのアドバイスをしてくれた。ただ、適当という割には毎回しっかりと考えてくれて、そして彼のいわれた通りにすると、不思議と大抵の物事はうまくいったのだった。  もちろん、それがたまたまだったという可能性はあるし、もっというなら僕自身が考えた方が良い結果になっていたという可能性もある。  それでも、次第に僕は何かあったら必ずメに相談するようになっていった。
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