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育て方
ぼくは怨霊を育てている。
もちろん相手は愛玩動物ではないので、ぼく自身をエサに誘き寄せて取り憑かせた。
ある男への復讐のため、敵討ちのためだ。
小動物を捕食する弱い低級霊を、なんとか人を襲って食らうレベルに育てるのは苦労した。
三日に一回は、ぼくの代わりになって怨霊の空腹を満たすエサを求め歩いた。
とくに今の姿の素地になっている、放し飼いの猛犬を食わせてからが大変だった。
動きの速さも凶暴さも大幅に増したので、空腹の兆候を見逃すと命取りだ。
体も大きくなり、食べる量も増している。
だから先ほどのような社会のルールを守れないクズを探した。
ぼくに腹を立て、襲いかかってくるよう挑発するためだ。
育てている怨霊は、霊能力を持つぼくを食らうために取り憑いている。
だからぼくが襲われると、目当てのごちそうを横取りされる、と勘違いしてしまう。
結果、相手を喰らい、腹が膨れて食欲をなくす。
ぼくが相手にのされて自滅するのを待てないのは、頭が悪いからだ。
食事が終わり、ひと回り身体が大きくなった怨霊は、頭上2メートルくらいを浮遊し始めた。
「ゆっくり消化するといい」
タバコの匂いが漂う。
食べたエサの体臭が移ったのだろうか。
接近が分かりやすくなっていいが。
――頃合いだ。
彼女を死に至らしめたあの男に、復讐する時がきた。
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