8人が本棚に入れています
本棚に追加
うつくしいひと
ぼくの彼女、みのんには霊感があった。
霊能力者の家系でもないのに、霊を視ることが出来たんだ。
それだけで魅力的なのに、さらに加えて顔立ちが整っていた。
ぼくはひと目で恋に落ち、彼女を嫁にすることに決めた。
必死の努力の末に交際を開始し、深い仲になった。
「美音て今、幸せなのか? 俺を試してみ」
あいつは顔と運動神経に恵まれた、というだけの凡夫のくせに、みのんを横取りしようとした。
だからぼくは家に伝わる呪詛をかけた。
使い魔に取り殺させようとしたんだ。
低級霊だったし、万一、近くにみのんがいても見えるからだいじょうぶだろうと思った。
「正木くん、避けて!」
心やさしいみのんは、あいつのせいで祟られ、苦しみながら逝ってしまった。
悪霊によって死を迎えた者は、浄界には行けない。
ぼくは魂にかけて復讐を誓った。
「ふだん使うような呪詛じゃだめだ」
ぼくでも御することの出来ない強く大きく荒々しい怨霊に、あいつを喰らわせる。
そのためには最後は自分の身を提供する覚悟で、人喰いを育てなければならない。
敵討ちが成就して、あいつが食われたら、数日後にはぼくも喰われるだろう。
――それでいい。
大事なみのんを奪った男が最悪の死を迎える様を、この目で見られるのなら。
最初のコメントを投稿しよう!