うつくしいひと

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うつくしいひと

ぼくの彼女、みのんには霊感があった。 霊能力者の家系でもないのに、霊を視ることが出来たんだ。 それだけで魅力的なのに、さらに加えて顔立ちが整っていた。 ぼくはひと目で恋に落ち、彼女を嫁にすることに決めた。 必死の努力の末に交際を開始し、深い仲になった。 「美音(みのん)て今、幸せなのか? 俺を試してみ」 あいつは顔と運動神経に恵まれた、というだけの凡夫のくせに、みのんを横取りしようとした。 だからぼくは家に伝わる呪詛(じゅそ)をかけた。 使い魔に取り殺させようとしたんだ。 低級霊だったし、万一、近くにみのんがいても見えるからだいじょうぶだろうと思った。 「正木くん、避けて!」 心やさしいみのんは、あいつのせいで祟られ、苦しみながら逝ってしまった。 悪霊によって死を迎えた者は、浄界には行けない。 ぼくは魂にかけて復讐を誓った。 「ふだん使うような呪詛じゃだめだ」 ぼくでも御することの出来ない強く大きく荒々しい怨霊に、あいつを喰らわせる。 そのためには最後は自分の身を提供する覚悟で、人喰いを育てなければならない。 敵討ちが成就して、あいつが食われたら、数日後にはぼくも喰われるだろう。 ――それでいい。 大事なみのんを奪った男が最悪の死を迎える様を、この目で見られるのなら。
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