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ああ、きっと、あたしはこの人から逃れられない。
抵抗するだけ無駄なのだと、本能が悟る。
「愛してるよ、優美ちゃん。」
ぼんやり見上げるその姿は、あたしの好きだった姿のまま。
感情だけがぐちゃぐちゃに、修復できないほど無惨に切り離されてしまった。
「ああ、可愛い……。可愛すぎるよ優美ちゃん。」
大切だった、大好きだったこの人を、あたしはまた愛せるのだろうか
それが常軌を逸した男だとしても…?
脱力したあたしに触れる手つきは優しい。
そこに感じる、慈しみのような懇願。
混ざり合う愛情と欲望。
「優美ちゃん、いっそこのまま堕ちちゃえば楽になれるよ。」
うっ、、あっ、、としか言葉を溢さないあたしを見下ろして
「ははっ、俺、今最高に幸せ。」
誰かの幸せは、誰かの不幸。
あたしの幸せはここに、あるのだろうか。
「俺からの愛、受け取って…っ、」
無邪気に与えられる熱が、
あたしを殺した。
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