その白を染めて

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だから、自分が好きになった人と付き合えるなんて夢のまた夢。 それでも、叶わない恋だからってすぐに諦めるほど、潔くもなかった。 「何それ。誰にも愛されない星のもとに生まれたって、大袈裟だろ。」 「そんなことないもん…。あたし、今まで自分が好きになった人から好きになってもらったことないんだよ?木村くんが恋を知らないように、あたしは愛されるってことを知らないの…。」 しくしくと、今度は本当の涙を流し始めたあたしを、木村くんがギョッとした顔で見る。 その表情は初めてみた。そんな顔すらかっこいい。 恋は盲目というけれど、本当なんだなぁ。としんみり思う。 「…傷口を抉ったみたいで悪いな。」 「大丈夫。慣れてます…。」 「打たれ強いのか弱いのか、どっちだよ。」 「ぐすんっ、確かに…。情緒がおかしくてごめんね?」 涙に濡れた顔面を拭ってへらっと笑ったあたしに、ふっと、笑い返すと 「…なんか、可愛く見えてきたかも。」 なんて、あり得ないくらいに思わせぶりなことを言う。 な、何なのさ急に。そんなこと言うとありもしないはずの希望が膨らんじゃうじゃないか。 「もうっ、やめてよ!いたいけな乙女心を弄ばないでっ!」 木村くんの言葉に、今度はぷりぷりと怒り出したあたしって、まじで情緒が終わってるとしか思えない。
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