その白を染めて

「あ〜、悪い。でも本当に、何でかちょっと可愛いなって思ったんだよ。」

その後、何でだろうな？と言いながらジョッキに残っていたビールを飲み干した。

そんなの、あたしに聞かれても分からないよ。

「木村くんって、クールそうに見えてちょっとおちゃめなところもあるし、そのギャップにまたやられてしまうよね。それに加えて見た目も勿論かっこいいし、こんなあたしにも優しいし、口はちょっと悪いけど、そんなところも素敵っていうか、木村くんを構築している要素全てが好きだなって、思ってしまっているあたし流石にきもすぎるね。」

本当どうした。

酒に酔っても呑まれるなとあれほど先人が言っていたではないか。

なのに、いい感じにお酒の回っているあたしは、これまでの好きが伝わっていなかったのであれば伝えなくちゃと、ぺらぺら木村くんの好きなところを語りだす。

まじでごめん。酔っ払いってうざいよね。

「へえ？俺の全部ねえ…、なら、本当に俺の全部が好きかどうか、試してみる？」

やや大きめの口を綺麗に押し上げて笑うその表情は何だかいつもとは違う、ちょっと男を感じさせる表情で、「え…？」と言葉を詰まらせてしまった。

「野々原ってそういうの無理なタイプ？」

「そ、そういうのとは…？」

これ以上はやめて。あたしが木村くんに対して抱いてる期待がエベレストよりも上昇しはじめてしまったよ。