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雷斗が事故を起こしたのは、高校1年の春だった。
買ったばかりのスクーターに乗っていた時、路上に立ち尽くす子猫を咄嗟に避けて転倒、右足を骨折してしまったのだった。
「ワリィ……気をつけてはいたんだが、避け切れなかったわ。」
大急ぎで病院にかけつけた風太に、雷斗は申し訳なさそうに言う。
「でも困ったな……。5日後は新人戦なのに……。」
それほどサッカーの強い学校に入学したわけではなかった。
雷斗が、風太の高校に合わせたから。
それでも、雷斗を中心にサッカー部は躍進し、これまで練習試合は負けなしだった。
今度の新人戦は期待できる、そう評判が高まっていた矢先の、雷斗の事故だった。
「仕方ないよ。兄ちゃん抜きで頑張るしかない……。」
「でも、みんな今回は夢を見てるんだ。新人戦で優勝したいって……そうだ、風太、お前……俺になってくれないか?」
「え……えぇ!?」
それはあまりにも突飛な、兄の提案だった。
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