Gemini

3/17
前へ
/17ページ
次へ
「なぁ風太、お前、もうサッカーやらないの?」 これまで幾度となく雷太に言われ続けてきた言葉。 「もう、今更だよ。一緒にプレイしたって、兄ちゃんとはもう天と地の差なんだから……。」 「うーん、そうかな? 俺は普通に風太と同じチームでやりたいけどな。だからお前と同じ高校にいるんだし。クラブチームのスカウトも蹴って、インターハイ優勝を目指してるんだし。」 雷斗は、風太と一緒にサッカーがしたい、ただそれだけなのだ。 幼い頃と同じように、ただサッカーを楽しみ、パスを交換する楽しさ、ゴールを決める喜びを分かち合いたかったのだ。 「もう、何年もサッカーしてないし……。兄ちゃんと双子ってことは、出来るだけ隠しておきたい。兄ちゃんが恥かいちゃうからさ。」 兄が脚光を浴びれば浴びるほど、弟には陰が差していく。 同じ高校に通っているのに、兄は目立ち弟はまるで空気の様な存在になってしまっていた。 あの時までは……。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加