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ニセモノのお父さん
ミヨはどうしても言えなかった。
もちろん夫ともしてはいたけれど、このお腹の子どもは絶対にあの時の子ども。
ミヨは婚約者のサトシとの結婚をあと2週間後に控えている時、幼馴染のケンと偶然に出会った。
中学校の時に真剣に付き合っていて、高校の時には男女の関係にもなった。
そのまま結婚するのかと思っていたけれど、ミヨがそのまま大学に行って、ケンは就職した。
段々二人の時間軸がずれていって、自然消滅した。
マリッジブルーになっていたミヨはケンと飲んでいるうちに、なんとなく高校時代の事を思い出して、そのままホテルに行った。
「避妊して。」と言ったのだが、「外で出すから。」と言うケンを強く否定できなかったのはこれまでその方法で避妊に成功していたからだった。
それなのに、ケンは本当に我慢できなかったのか、わざとなのかはわからないが中で出してしまった。
ミヨは青くなり我に返って、ケンを突き飛ばし、急いでシャワーで中まで必死に洗い流した。この時きちんと病院で薬を処方してもらったり洗浄してもらっていたら、こんな思いはしなくて済んだのに。
勿論、結婚をする相手のサトシとも3日前にしていたが、生理直後の安全日だったので避妊しなかった。ミヨは大人になってからはきちんと基礎体温を測っていた。もう35歳。早い妊娠を望んでいたので間違いはない。
その後、結婚式が終るまではサトシとも関係は持たなかったので、ミヨの計算からするとケンがお腹の子の父親に違いない。
その後すぐに妊娠がわかると、サトシは「あの避妊しなかった日の子どもだよな~。ミヨも間違えることあるんだな。」と苦笑いしていたけれど・・・・
ケンもサトシも血液型はA型なのでそこでばれることはないけれど・・顔だって、子どもなんてどう変わるかわからないから大丈夫だと思うけれど・・・
でも、ミヨだけは本当の事を知っているのだ。
生まれた子供は女の子だった。
「女の子はお父さんに似るのよねぇ。」と、何気ない義母の言葉にギクッとする。
その後、無事、今度はサトシの子どもも授かり、姉妹として育てている。
公園のママ友の中でも、特に信用できるママ友に、ミヨはある時打ち明けた。
「へぇ~。でも、旦那さん疑ってないんでしょう?大丈夫だよ。よっぽどのことがなければDNA鑑定なんてしないだろうし。
まぁさ、ミヨちゃんが教えてくれたから言うけど、うちだって3人のうちの真ん中は父親違うよ。」
「え?」
「ちょっとさぁ、そのころ旦那とうまくいってなくて、ホストと遊んだら中で出しやがってさ。慌てて、その夜に旦那とも寝たわよ。
でも、ちょっとおっきくなってきたら、顔立ちからして、ホストの子だわ。
女って、誰の子どもなのか直感でわかるよねぇ。」
「顔立ちって・・大丈夫なの?」
「何言ってんのよ。ミヨさんだって一緒じゃん。大丈夫。日本人の内3人に一人はニセモノのパパの子どもなんだってよ。
結構多いんだからばれないって。」
「あぁ、そうなのかぁ。」
ミヨは公園の子供達を良く見た。
兄弟姉妹なのに似ていない子供達が結構いるではないか。
「相談してよかった。」
「もちろん、この事は墓場まで持って行かないと、子どもがかわいそうだからね。」
「そうよね。子供がかわいそうよね。」
可哀そうなのは、ニセモノの子どもにも愛情を注ぎ、お金をかけている旦那様だと思うのだが・・・
さぁ、あなたの子どもはちゃんとあなたの子どもですか?
男性はご注意を。
でも、育てていれば誰でも自分の子どもとして愛情をもって育てられると思うので、やっぱり本当の事は、母親が墓場まで持っていくしかないですよね。
【了】
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