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そうしているうちに、父の仕事が決まった。離婚のショックで会社も休みがちになって辞めてしまっていたのだそうだ。しかし自分の父親からしっかりしろと叱られ、目が覚めたといっていた。
「で、私とお父さんはまた都心に戻ることになったんだけど。おじいちゃんにはお世話になったし、ちょこちょこ行ってたんだ」
すると不思議なことに気づいた。祖父の家がある地にいる時はあの夢を見るが、離れてしまうと見ないということに。そうするとまた気になってくる、一体何なのだろうと。
「そんな中で新型のウィルスが流行ったじゃん。しばらく行くのはやめようってことになって。三年位かな、連絡は取り合ってたけど全然いかなかった」
世間がようやく新型ウィルスは風邪みたいなもの、という認識になって久しぶりに祖父の家に行った。農作業を手伝って何事もなく帰ってきたのだが。
その日の夜、中学時代の友人であるササコから連絡が来た。都心に引っ越してしまうとお互いなんだか疎遠になってしまって、連絡を取り合っていなかった。
「夢を見るの」
「え」
「昔、華音がみてたっていう夢。最近私も見るようになってどんどん気になってきて。最近は約束の場所に行かなきゃっていう焦りみたいのがあって」
中学の時はバレー部に所属していたササコ。ハキハキしていつも笑っていた印象なのに、電話の向こうのササコはなんだかぼんやりしたような薄暗い感じだった。
「あの桜の場所に行けば、何かわかるのかもしれないけど。最近は家族から止められてる。ねぇ、華音は今夢をみてないの?」
「う、ん。まあ」
その土地に行った時だけ夢を見るのだが、なんだか雰囲気に飲まれてそう答えてしまった。なんだか「見てないよね?」と言われている雰囲気だったからだ。
「そっか、やっぱり私だけなんだね。そっか、わかった。じゃあね」
「あ、ちょ」
そこで電話が切れた。その後連絡を取ろうとしても連絡がつかなかった。
胸騒ぎがして祖父に電話をした。華音が不思議な夢を見ていたのは祖父にも話していたので、すぐに話が通じたのだが。
「そういえば話してなかったな。華音ちゃんを怖がらせちゃいけないと思って。実は昔女の人が一人亡くなったことがあったんだ」
「え?」
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