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必ずまたお会いしましょう。
約束ですよ。
桜の木の下で必ず。
―――様
昔から同じ夢を見る。どこか遠くへ行こうとしている男と一時の別れを口にする女。近くには大きな木がある。鮮やかな花をつけて、風が吹くと枝がゆれる。
女が刀を差しだし、男は受け取る。うつ向いた彼に深々と頭を下げた。頭を下げる時、ゆっくりと目をつぶる。そうして、目が覚めるのだ。
「また、あの夢か」
子供のころからときどき見てきた。不定期で、数か月見ない事もあれば毎日見ることもある。忘れた頃にまた見る、まるで忘れないでくれと言わんばかりに。
神妙な面持ちで夢の話をする華音の話を、バイト仲間の荒牧は黙って聞いていた。普段は明るくはきはきしているのに、今日はなんだか沈み込んでいる。どうした、と声をかけるとちょっといい? と、こんな話を始めたのだった。
「中学の時に友達に話したら、ちょっと調べてみようってことになったんだ。なんかね、その話に似た話知ってるって言われて」
小学生の時父の故郷に引っ越したそうだ。母親との離婚がきっかけだったというので、家庭の事情がいろいろあったのだろう。その地に住む祖父と一緒に三人で暮らし始めた頃から同じ夢をみるようになった。毎日見るわけでもないので、特に気にしていなかった。
中学に上がり、この話で盛り上がった友人の一人が目を輝かせた。幼いころから祖母から聞かされていたらしい。その地に古くから伝わる話だそうだ。
身分違いの男女の恋。武家の生まれの男と、農村の生まれの女。当時身分違いは結婚が許されない時代だ。男はその家の当主となり女を妻にする約束をした。戦場へ赴く時に二人は桜の木の下で必ずここで会おうと約束をしたそうだ。
「冷静になって考えればどこにでもある話なんだけど。私の夢の内容そのままだったから盛り上がっちゃって」
その後はしばらく調べたりしたのだが、それ以上の詳しい情報はわからなかった。
「裏山に大きな桜が一本あるんだ。っていうよりも、桜ってそこにしかないんだけど」
立派なソメイヨシノが生えていて、地元の人は毎年そこで花見をするらしい。
「頑張って調べたけど結局飽きちゃって、しかも受験も始まるからこの話はそのままナシになったの」
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