うれし涙

「はい？」
「いや、なんでもない」
「なんですか？」
「だから、体形が良いのかと思いました」
「これはどうも」
　俺は笑ってみた。カズが無言になった。そして俺の顔を見つめて
いた。
「どうしましたか？」
「杉原さん可愛いなと思って」
　カズも笑顔でそんなことを言い始めた。
「これはどうもありがとうございます」
　カズに、なんと言えば良いか、分からなかった。
「好きな人はいますか？」
　俺はカズが面白いことを言う人だと思った。
「実は仲の良い人ならいます」
「やっぱりか」
「野球部では試合の時、どこをポジションにしましたか？」
「センターとか外野です。肩が強いです」
「すごいですね。肩が強いですか」
「まあ、弱くはないです。野球で外野は重要です。内野は後に外野
がいますが、外野は後にいませんから、ボールをトンネルしたりし
て、外野の後にボールが行くと、二塁打とか、三塁打とか、場合に
によっては本塁打とかの、長打になってしまいます。だから、責任
が重いのです」
「なるほど、詳しいですね」
「甲子園に行けるかもしれなかったのです」