うれし涙

31/58
前へ
/58ページ
次へ
「勝ち進んだのですか? 地区予選大会を」 「はい。決勝まで勝ち進みました」 「それは素晴らしいですね」 「ありがとうございます。決勝は惨敗でした。杉原さんは陸上部で は何をしましたか?」 「競走をやりました。短距離走とか、中距離走とかでした」 「大会で勝ったのですか?」 「一応、全国高校総体には出場しました。でも負けました。惨敗でした。勝つことが出来ませんでした。俺より走るのが速い人は、たくさんいました」 「それはすごい。全国高校総体なんて」 「最下位でした」 「それでも大会に、出たのでしょう。すごい。格好良い」 「全然、格好良くないです。スタート直後に倒れました」 「スタート直後に倒れたのですか。どうしてですか?」  カズは不思議だと思ったらしかった。 「俺もいまだによく分からないのです。何故、倒れたのかな。何か につまずいたか、何かでしょう」  俺は本当に分からなかった。高校総体の一五〇〇メートルのスタートの時に、俺は足を踏まれた記憶があった。でも、俺はその話はしなかった。 「その時、どこか、ケガしませんでしたか?」  カズに真顔で聞かれた。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加