うれし涙

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「擦り傷程度なら、しました」  笑顔でカズは食べ終えた、うどんとそばの入っていた食器をまとめて、オフィスの玄関に置いた。 「部活って結構ハラスメントみたいなことありましたよね」  カズは言った。  俺は何も答えられなかった。 「杉原さん、僕とバンド組みませんか?」  カズが俺の後に立っていた。 「バンド組むって、俺は何のパートをやるの? 不思議なことを言 いますね。私は何をやれば良いのですか? あはは」  俺はカズのせりふに失笑した。その時に、カズは嬉しそうな顔の 表情になったが、さびしいような顔の表情になった。 「ずばり、ギターをやりませんか?」  カズも笑っていた。 「俺、ギター弾けません」  俺は無難に答えた。 「僕が教えてあげます」  カズが笑顔になった。 「ギターを持っていません。自信がないです」  俺もほおが緩んだ。 「編集長がドラムを出来るらしいです」 「俺がギターを担当するのですか。あなたは何をするのですか?」 「何にしようかな。僕はギターとベースを弾けます。どちらかにし たいと思います」 「ギターの弦は何本ですか?」
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