うれし涙

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 俺はカズと編集長と三人で、バンドを組むことになった。俺と編集長はスタジオでリハビリの演奏をした。俺はピアノではなくシンセサイザーを演奏した。カズがスタジオにエレキギターとエレキベースの両方を持って来た。  カズに「ギターを弾いてください」なんて言われたらどうしようか、と俺は心配した。  テクノと呼ばれる音楽が、生まれた初期の時代の頃から、主に三人組で活動していたグループだった、YMOの曲を、俺たちは演奏した。 「歌ものを演奏する時にはボーカルはどうするの?」  カズがベースをストラップで、肩にかけて持ったまま言った。 「それは言いだした、君が歌え」  すると、編集長が笑顔でドラムセットの、スネアドラムを叩いた。 「しょうがないな」  カズがふざけてYMOの「君に胸キュン」を歌った。すぐに歌うのを途中でやめた。 「なんで、アカペラで、歌っているのかな? この曲はドラムが、歌うのではないですか」  カズが、ベースを弾きながら言った。  俺がシンセサイザーを弾き、カズがベースを弾き、編集長がドラ ムを叩いた。  少し時間がたつと、編集長がドラムソロを叩いた。
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